COLUMUN
法律コラム

そもそも、2024年問題って
2024年問題、知っていますか。
端的には、2024年4月1日以降、一定の業種で、時間外労働時間の総量規制が敷かれるようになったこと。建設業については720時間、自動車運転業が960時間、医師について960時間(1860時間)とされるようになったこと。
そのほかの業界は、1年の時間外労働時間の上限は、(36協定を結んだ場合で)360時間のままです。
特に、自動車運送業つまり運送業については、何も対策を講じなければ、2024年には14%、2030年には34%の輸送力を不足することになってしまうともいわれています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/other/free_shipping/index.htm
運送業界と2024年問題
今日は、自動車運転業‐運送業について、その詳細をみていきたいと思います。
時間外労働の総量規制は、労働者の生活と健康を守るためのもので、望ましいことです。
とはいえ、物流業界は、コロナ禍に始まるEC事業、中食の進展もあり、これまでにない繁忙状態にあります。そんな中で、時間外労働の総量規制に始まるさまざまな規制は、限られた人材、減らない業務量の中で、企業の存続に大きな影響をもたらしています。
以下では、その概要を見ていき、そして、雇用主側でのコンプライアンス対策を考えてみましょう。
時間外労働賃金の見直し(2023年4月~)
そもそも、「働き方改革関連法」により、2023年4月以来、中小企業に対しても、月60時間を超える時間外動労に対して、50%の割増賃金を支払うことが義務付けられました(40時間以上65時間未満は25%のままです)。
まとめると、
通常の時間外労働(1日8時間を超えた部分):割増率1.25倍
→月60時間超は1.5倍
法定休日(週休1日/4週4日)における時間外労働:割増率1.35倍
深夜残業における時間外労働:割増率1.5倍(1.25+0.25)
→月60時間超における深夜残業は、実に割増率1.75倍(1.5+0.25)
法定休日における深夜残業:割増率1.6倍(1.35+0.25)
ということになります。
これにより、もともと労働時間の長い物流業界は、人件費の高騰を抱えることになりました。これまでの賃金体系の見直しを迫られる企業も多くあります。
時間外労働時間の総量規制(2024年4月~)
労働基準法は、「時間外労働」時間の総量規制を、36条により、いわゆる三六協定を結んだ場合、一般企業について年間720時間まで許容しています。
今回、令和6年4月1日に適用となった「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改正基準告示)」により、自動車運転業務は、年間960時間とされました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html
これがいわゆる「2024年問題」です。
拘束時間の総量規制
加えて、「拘束時間」を、
・1日原則13時間以内(上限15時間、14時間以上は週2回)
・1か月284時間以内(これを超えた拘束は310時間まで連続3か月上限)
※2024年3月末日までは、1か月293時間(320時間)以内まで認められていました。
※この拘束時間、一般企業で8~9時間(休憩込)×22日とすると198時間に過ぎません。自動車運転業務が一般企業に比べその拘束時間が特に長いように思えるのはのは、その1日の就業時間の長さによるものもありますが、週休1日が可能であることにもよります。あまり知られていないのですが、労働基準法上は、週休1日あるいは4週を通じて4日以上の休日を与えなければならないとしているだけで、週休2日は法律の要請ではないのです。
・1年間3300時間以内(一定の上限で3400時間)
とされました。拘束時間とは、荷待ち、休憩時間も含めた始業時間から就業時間を含めた時間のことです。
これにより、基本的に、法定労働時間(週40時間×22日)が172時間、休憩時間が22時間(日1時間×22日)、時間外労働時間が80時間の合計284時間でないと、労働させられないことになります。
ところが、令和3年には、繁忙期における1か月の拘束時間が274時間を超える事業者が34%(長距離運行では43%)、320%を超える事業者も3.4%(長距離運行では4.6%)あったそうです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf
もちろん、これを改めるのが今回の改正なのですが、急に業務量が減るわけでも、急に労働分担を可能とするだけの人材が生まれるわけでもない以上、その対処はけして容易ではありません。
事業者側は、いかに対策すべきか
まず、最低限、「時間外労働・休日労働に関する協定書」(いわゆる「36協定」)を労働者との間で締結し、かつ、これを所定の様式(労働基準法9号4(1か月45時間を超えない場合)または9号5(1か月45時間を超える場合))で作成の上、労働基準監督署に届けなければなりません。
そのうえで、これまでの賃金体系をよく見直し、
通常の時間外労働(1日8時間を超えた部分):割増率1.25倍
→月60時間超は1.5倍
法定休日(週休1日/4週4日)における時間外労働:割増率1.35倍
深夜残業における時間外労働:割増率1.5倍(1.25+0.25)
→月60時間超における深夜残業は、実に割増率1.75倍(1.5+0.25)
法定休日における深夜残業:割増率1.6倍(1.35+0.25)
の割合で払われるようになっているか、注意する必要があります。特に、みなし残業代込で賃金規定を整備している場合などは、いったん基礎となる時給に引き直した上、見直しを要する場合があります。
加えて、労働管理として、改正基準告示に従った拘束時間内での労働、また、適切なインターバルが確保されているか等を、見直すことができるようにする必要があります。
就業規則、賃金規定の見直し、労務管理の在り方、時間外労働賃金が適切に支給できているか等についてお困りの事業者様がいらっしゃいましたら、ぜひ早めにご相談ください
弊所では弁護士事務所には珍しい、オンライン予約システムを導入しております。
予約の際に、ご希望の相談メニューとご都合の良いお時間帯をお選びいただけると好評です。
こちらのページにあります「ご予約・お問い合わせはこちら」よりご予約ください。
もちろん、お電話でもご予約承っております。お電話での弁護士へのご相談は…℡03-3709-6605
法律的な見解はもちろんですが、さらにその一歩、相談者さまの人生に寄り添った形でお話させていただいております。
ご相談がありましたら、お気軽に当事務所までご連絡ください。
シリーズ記事代表コラム
- 「共同親権」(共同監護)のこと
- 養育費不払い問題、民法改正なるか?
- 面会交流「会わせたくない」「会わせてくれない」が錯綜する理由
- 弁護士が家事事件をあつかう、ということ
- 離婚時に父親が親権をとる、その理由とは
- 長引くコロナ禍、結婚式キャンセルに関する新たな業界指標が発表
- 子の父を決める「嫡出推定」の民法改正について。離婚弁護士がこれまでの矛盾を解説
- 140年ぶりの民法改正。弁護士が読み解く「18歳成人の春」はいかに
- 葬儀費用は誰が出すのか? 遺産から負担できるのか
- 「不倫」と社会的・法的責任について。「既婚男性との間で妊娠」で社長辞任…の衝撃
- 「テラスハウス」の事案にみる、名誉棄損と侮辱について
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題
- W(ダブル)不倫は珍しくない?! 身の回りで起こってしまった時、慰謝料請求で注意すべき点とは
- 知っているようで知らない「ストーカー規制法」について
- 「ストーカー規制法」警察に動いてもらうためにも、弁護士に相談したほうがいい理由
- 逆転勝訴から考える、「性自認」と「性的指向」の話
- 東京家裁、福原愛さんの「子の引き渡し」審判から読み解く「共同親権」について
- ビッグモーター社事件で感じる違和感と、刑事・民事の責任の所在とは
- 日大アメフト部の薬物事件をめぐって、法律家の見解
- ハル・ベリーの離婚がから考える、双方が平等に監護する「交代監護」とは
- 「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題・続編
- 日本での「無戸籍問題」をめぐって
- ジャニーズ「社名変更」なるも、法人格は「そのまま」という事情
- 「性同一性障害」の手術要件で、最高裁の下した判決について
- 「面会交流アプリ」利用について、離婚弁護士が思うこと
- 芸能人のスキャンダルと週刊誌報道、「名誉毀損」について
- 共同親権、国会への法案提出見込み
- サッカー日本代表選手の性加害疑惑について、法律家の思うところ
- 「共同親権」の導入、民法改正案を閣議決定か
- 福原愛さん、子どもの監護「共同親権」で和解か
- 2024年4月1日から義務化された「合理的配慮」とは。具体的事例を交えて法律解説
- 共同親権を認める民法改正案が、参院で審議入り
- 「2024年問題」で運送業界はどうなる?事業者側の対応策について
- ついに「共同親権」法案公布。施行は2026年5月までに
- 同性婚のカップルの子の親子関係を認めた初判決について
- 役員の退職金と退職金支給規程について〜宮崎テレビ最高裁判例〜
- 松本さんの名誉棄損訴訟、取り下げに。弁護士による見解解説
- 中居さんスキャンダルからみる「日弁連ガイドライン」の「第三者委員会」とは
- 中居氏とフジテレビ問題、第三者委員会報告書と守秘義務解除について
- 共同親権導入まであと1年。親権者の決定は「監護の実績」の有無で決まる
- 弁護士と読む時事ニュース 「川崎ストーカー被害殺害事件」について
もっとみる
SERIES
RECENT POSTS
ARCHIVE
- 2025年
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
ご予約・お問い合わせ・オンライン相談
「ご相談者様の明日の幸せのために」
「事業や人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして
取り組んでおります。
まずはお気軽にご相談くださいませ。
「事業や人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして
取り組んでおります。
まずはお気軽にご相談くださいませ。